イワナの渓にときめく

「ときめきと、成り行きに従う。

僕はそうやって生きてるのかもしれないなぁ。」


釣りというものに触れて、そう感じるようになった。


自然に囲まれた故郷に帰ってきて、1 人のフィッシャーと出会い、その方に誘われるまま、米良鹿釣倶楽部主催のフライフィッシングスクールに参加。


そこで、この世界に強烈にときめいた。


そして、また、誘われるままに米良鹿釣倶楽部に入会。

昨日まで全く知らなかった人、価値観、世界に触れて、とにかく心が弾んだ。


ぴょんぴょんと弾んでいたら、こうして、ブログを書いてみないかという事になった。


釣りを始めただけなのに。


思いもよらない出会いや、新しいきっかけも、「釣り」に含まれる魅力なのだろうか。

僕には、この成り行きがとてもおもしろく感じる。

だから従う事にしました。


今回は釣り初心者、米良鹿釣倶楽部新人である私(KAI)がそんなとある1日をレポートさせていただきます。



4 月 15 日、前回のパタゴニアスタッフさんとのキャンプの余韻を纏(まと)いつつ、泊まりがけで調査に参加してきました。


今回は「イワナ」です。


え!宮崎でイワナに会えるの!?

と、胸をキュンキュンさせながら、この日を待ちました。


しかし、前夜から結構な雨。

集合場所に着くも、雨。

これ、イワナに会えないんじゃないか。と若干落ちる。


あたりが明るくなってきた頃、次々とメンバーが合流。

車を降りるなり、屋根の下に駆け込むようにして総勢 12 人が集まった。

つい先週ご一緒したのに、「久しぶり~」なんて挨拶を交わしたり、初めましての方も居て、一気に和やかムード。

気付けば、雨が、みんなの距離を縮めていた。


予報では、朝には止むとあったが、なかなか止まない。

雨が上がるのを待つことを諦め、水が濁る前にやろうという事になった。


調査は、事前に班分けした 3 班に別れ、僕は最下流の班に。

メンバーそれぞれ、フライ、テンカラ、スプーン、ミノー。の全部盛りだ。


「行ってきまーす」と、いざ調査開始!


一気に緊張。

だって、4 人で釣りした事ないし、どの位置にいたら良いのかもわからない。

キャストを見られるのもなんか恥ずかしい。

そうやって乱れたメンタルは、ライントラブルに現れる。


初っ端から絡まった。


置いてけぼりにならないように、急足で先頭に立ち、なんとか解こうとするも、メンタル

がやられてるので、これがまた解けない。ただただ、小心者を実感する時間が流れる。


なんとか取り直し、上って行くうちに、福岡から参戦したBrussburnerにアタリが!


この日の一匹目は、可愛いアマゴでした。


こうやって、喜びを分かち合うの素敵。


早速、サンプル採取に取り掛かる。


僕はここで、サンプル採取の方法、魚に触れる時の注意点、魚を落ち着かせる方法など、

色々と教えてもらった。先輩方は、魚の扱いがとても丁寧だ。


魚に会えたことで、空気も和らぎ、気付けば雨も上がっていた。


雲の隙間(すきま)から差し込む光を全身で受け止める KUMOJI。

ひとつ、ひとつの瞬間を共に喜べるって、いい。


渓相も体全体で体感する KUMOJI。

釣れても釣れなくても楽しいとはこのことですね。

本当に、ここの川は美しかった。


そして、この後、ついに僕にもアタリが!


この感動たるや。

もちろん、握手で喜びを共有しましたよ。

最高のメンバーと環境の中で、ファーストイワナをいただきました。


初のサンプル採取も行い、もう満腹。

昼食をとる前に、一日をいつでも終えられる心持ちとなった。


この日は、約 5 時間掛けて川を釣り上がり、その中でたくさんのことを教えてもらった。

魚に警戒心を与えない川の歩き方からトゥイッチング、使用するラインに関してまで。

そして何より、色んな表情を見せる自然や、そこで静かに生きる魚の美しさに感動した。


まだ、難しいことはわからないけれど、なぜ、米良鹿釣倶楽部が存在するのかが、少しわかってきたように思う。


今、僕たちが、こうして喜びを感じられるのは、この豊かな自然があるからこそ。

苔に覆われてふかふかとした岩に触れれば、この環境は人間の寿命を簡単に越える程の時間を積み重ねて出来たものだということが、容易に想像できる。そして、非常に脆(もろ)い。

人がしゃがんで歩かなければならない程、魚たちはもっと繊細なんだと思う。


こうして歩いてみて初めてわかる、美しさの脆さ。

壊れたら、取り返せない。


初心者の僕でさえ感じる事ができるのだから、川を歩き尽くした先輩方は、計り知れない愛着を持っているのだと思う。




終わる頃には、すっかり、この川に愛着が沸いていた。


心の中で色んな感情が芽生え始めた頃、中間区間の調査を行っていた班の姿が見えた。

一緒に最後のもうひと粘りを楽しんで、調査は終了。


合流して話を聞くと、どの班もイワナに会えたようだ。


そのお陰か、夜の部も盛り上がった。

いや、釣れなくたって、きっと盛り上がったに違いない。

個性派揃いのメンバーは、みんなとにかく愉快。

誰かが言った「誰一人ブレない」にはお腹を抱えて笑った。

おもしろい場所に辿り着いたなぁと、ついつい飲み過ぎながらも色んな人生がブレンドされた、最高の夜を味わった。


翌朝、特に集合時間を決めていた訳でもなかったが、ホテルの食堂にみんな集まった。

浮腫(むく)んだ顔で昨夜の余韻に浸り、中には二日酔いに悩まさせるメンバーも。笑

それでもまた、この日は釣りを楽しんだようだ。

釣り好きはブレない。さすがだ。


今回までを振り返ってみて、僕は幸運にも最高の環境で釣りを始められたと改めて思った。

そして、この釣りというものは、自然を理解しない限りは成立しないという事も分かって

きた。

きっと、これからは、自然への理解を深めて行くことになるのだろう。今回感じた

ことが、どう変化して行くのか、自分でも楽しみでならない。


道のりは、長くなりそうだ。


(文・写真 KAI ※旧 VOLVO35)


米良鹿釣倶楽部

米良鹿釣倶楽部は、釣りを通じてトラウトの学術研究に対する協力および漁協活動の支援を行うNPO法人です。

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