鱒の森 №65

振り返ると今年は、いい意味で本当に色々なことがありました。



・パタゴニア環境助成金プログラムの採択~調査研究


・佐藤成史さん上小丸川訪問~フライフィッシャー№300掲載


・土屋守さん、知来要さん上小丸川訪問~FishingCafé vol.70掲載


・鱒の森№64掲載



ざっと羅列するとこんな感じです。


3月~9月の7ヶ月という渓流シーズンですので、かなりの頻度でイベントに関わってきたという印象があります。


そして年の瀬、


まるで今年を総括するような嬉しいご依頼をいただきました。


それは先月11月、とある日のこと。


あの「鱒の森」編集者、宇野さんからのメール。


「米良鹿釣倶楽部を紹介する記事を掲載したいと思っています。」

「文字数は大体〇〇〇〇字程度です。」


ここまでつたないながらも色んな所で文章を書かせていただいてきたので提示された文字数から大体のページ数がイメージ出来ました。


「これはちょっと気合いを入れなければ。」


そう思いました。


それから1週間くらいは、仕事が終わった夜に自宅でパソコンに向かい合う日々。


何せ普通の釣行記とは違い、当然岩槻先生の研究成果も紹介することになるので1字1句、注意を払わなければならない所がたくさんあります。


また原稿が出来上がった後は、先生や他のメンバーにも何度何度もチェックをしてもらい、その度に訂正を繰り返し、皆が納得出来るようなものに仕上げようと私なりに奮闘しました。


文章をつづり、写真を選んでいると自然に今シーズン起きた色んな出来事が心の中によみがえってきます。


まだまだ寒い春雨の中、発光するかのように鮮やかな朱色を見せてくれたあの魚。


あのフライフィッシング界のレジェンド、佐藤成史さんをガイドした数日間。


車で何時間もかかる他県から泊まりがけで調査に来てくれたメンバーたち。


とんでもない数の堰堤を乗り越えながらもDNAサンプルを集めてくれた武勇伝。


なにせあのパタゴニアの環境助成金プログラムに採用されるという名誉なのです。


このことにキチンと応えられるように、地元の川に一体どんな遺伝系統のヤマメ・アマゴ等が生息しているのかをハッキリさせるため、メンバー挙げて3月のシーズン開始から、9月の終了までがむしゃらに走ってきた日々でした。


そもそも、釣り人たちにこれだけ愛されているヤマメやアマゴという魚たちの生息域や分類自体が実は、約65年前に提示された学説に基づいていて、それは現代のテクノロジーに照らし合わせるとつじつまが合わない点も多いという事実。


そのことに対して長年かけて挑んでこられ、世の中に対して一定の指針を示されている岩槻先生という存在。


そんな方と知り合い、こんな団体を作ったのもきっと何かのご縁です。


一昔前、1つのテーマについてインターネット上で色んな人が議論し、より良い結論を導き出すことがよく「集合知」というフレーズで言い表されていました。


先生の研究成果をきっかけにしてヤマメやアマゴという魚のことをもう1回全国で見つめ直し、その結果を共有することで、


私たちは一体、「何を釣っているのか。」


そして彼らを、「どう守ってゆくのか。」


このことについて、研究者、漁協関係者、メディア関係者、そして釣り人、みんなの集合知で議論し、より良い未来のフィールドを作ってゆけたら。


そんな壮大で誇大な妄想をふくらませながら今回の記事を書かせていただきました。


ここまで堅苦しく書くと、この先生がとても気難しい人物だと思われるかもしれませんが、実は全くそんなことはありません。


とにかく明るく、気さくで、とにかくバイタリティあふれる方です。


実は、先生にYouTubeチャンネルに出ていただき、ヤマメやアマゴ、またはイワナの話しをしてもらおう、という企画が前からあるのですが、こちらはまだ着手出来ていません。

動画になればきっとその明るく、親しみやすいキャラクターがよく伝わると思うのですが。

これは来年への宿題になりそうです。


最後に先日、とあるオンラインイベントをきっかけにお話しさせていただいたパタゴニアの方がおっしゃっていたこと。


「鱒の森は(釣りそのものだけでなく)釣り場や魚を取り巻く環境問題なども好んで発信していただける媒体です。」


まさしくその通りで、やっぱり、まだまだ、なんだか小難しいと捉えられがちなこんなテーマに対して多くの誌面を割いていただいたことは現段階では「ありがたい」と言わざるを得ないかもしれません。


でも、もう、21世紀になってからずいぶん時間が経ちました。


きっとこれから、テクノロジーがさらに発達すれば、DNA鑑定だって各地でより簡単に行えるようになるはずですし、そうなるように働きかけたい。


近い将来、尺モノを釣ることのように、地元の渓流魚のDNAに詳しいということがステイタスのあるものにしたい。


みんなで気軽に仲良く、笑いながら、


「へえ、これはハプロタイプ〇〇番なんだ。レアもんだね!」


とか、


「この丸いパーマークは多分レトロな感じだね。」


なんて語り合えるような時代にしてみたい。


そして、在来魚の価値を理解し、彼らを保全するための活動を盛り上げたい。



もしかしたらこういったことの一部分を現場でやってきて、その楽しさを知っている私たちだからこそ、そう思えるのかもしれません。


そしてこの楽しさをもっともっと広げていきたい。そう思います。



世の中を見渡せば、気候変動による自然環境の急激な変化は私たちの予想を超えていますし、新型コロナの問題だってまだまだ先を見通すことが出来ません。


今年も決して明るいとは言えない年の瀬。


それでも、フランスの哲学者、アランの格言。


”悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意思によるものである。”


たまにこの言葉を思い出しながら、楽しかった今年をメンバーで振り返り、また来年も何より楽しみながら釣りに、調査に、イベントに頑張っていきたいと思います。


そして最後の最後にあらためて、私たち倶楽部にとってのマイルストーンにふさわしい機会をくださった鱒の森の宇野さんに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。(またのご依頼、お待ち申し上げております(笑))。


(文・写真 KUMOJI)

米良鹿釣倶楽部

米良鹿釣倶楽部は、釣りを通じてトラウトの学術研究に対する協力および漁協活動の支援を行うNPO法人です。

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