ひそか雨の小沢(九州イワナ 調査釣行 1)

(※注 「ひそか雨」とは、春先にしとしとと降る細かい雨のことです。)


<令和3年3月某日>


「〇〇〇谷と〇〇〇谷のサンプルがどうしても欲しいんですよね~。」


教授からそんな話しがあったのは、先月、2月中旬のことでした。


果たして、九州に在来のイワナはいるのか、いないのか。


その結論はまだ出ていませんが、アングラーとして学術研究に対してお手伝い出来ることは極力何でもやる!ということが私たちのミッション。


かくして、ヤマメ解禁である3月にイワナ釣り、というちょっと変わった1日が始まりました。


当日の参加メンバーは私(KUMOJI)と、


友人とワイワイやるのが何より大好きという倶楽部のムードメーカー、”BORAヤン”。


若干20代で漁協の理事を務め、大学の頃はヤマメの研究を行っていたという”上小丸KID”。


そして、どこか貴公子風なオーラが少し鼻につく、オシャレなたたずまいの”肥後守1500”の合計4人。


実は私、肥後守(ひごのかみ)さんと渓流に入るのは今回が初めて。(イベントでは何回も会ってたんですけど。)


ちなみに、”肥後守”というのは、彼が熊本県在住だからで、"1500"は愛用しているリールがアンバサダー1500Cというものだから。


ロッドのメタルグリップのシルバーと相まって、黒光りするアンバサダー。なんだかいちいちオシャレですね。


しかし、宮崎県内のメンバーが多数を占める米良鹿釣倶楽部の中で、彼は数少ない県外メンバー。


出来たてのワッペンもキレイにリュックに貼ってあります。感心感心。


ここまで数回行った倶楽部内のイベントなんかにもまめに顔を出してくれるナイスガイなのです。



4人で道なき道を30分ほど歩き、その後私とKIDのペア、BORAやんと肥後守1500ペアに分かれて2本の沢を調査開始。


しかしまあ、本当に小さな細い流れ。大股で軽くジャンプすればすぐ対岸に行けるくらい。しとしととですが、雨が数日降り続いてもこの水量です。




「こんなとこ、本当にいるのかよ~。」


思わず不安になり、軽くボヤキが出ます。


そもそも、イワナの生息調査は河川の源流域が多く、イワナが全然いないところ、水がすぐに涸れてしまう沢、行ってみたらそもそも水がない谷などに出くわしたことも多く、その打率は決して高くはないのです。


そんなこんなで、期待半分、あきらめ半分。冷たいひそか雨に濡らされながら、調査開始。



ところがところが、結果はすぐに出ました。


ヤマメにはちょっと厳しいであろう細い流れの中、彼らはしっかりと息づいていました。


山吹色の身体に薄いオレンジ色の斑点。お腹にはさらに鮮やかなオレンジが目に美しい。



福岡のメンバー、燃える男、"ブラスバーナー"工房特製のアクリルケースに入れて、記録写真を取り、若干申し訳ない気持ちでDNAのサンプルを採取します。


調査釣行は、一匹一匹釣った後に記録写真を撮り、DNAサンプルを採取し、元居たポイントに正確に戻す、という一連の作業が必要不可欠です。


これらを魚が大きかろうと小さかろうと行わねばならず、普通の釣りと比べるとかなり時間がかかります。


この日は結局、2組で11匹分のサンプルを採ることが出来ました。

BORA ・肥後守ペアより一足先に車に戻った私たち2人、


ひそか雨で冷え切った身体を車の暖房で暖めながら、色々と話しをしました。


九州のイワナのこと、

KIDがいる小丸川のヤマメのこと、

ちょっとスケール大きく、この国のトラウトを取り巻く状況のこと。


やがて彼らが帰ってきて、遅い昼食タイム。


食後にはBORAが何だかアンバサダーみたいなオシャレな器具で自家製コーヒーまで淹れてくれました。


その後、近場の渓流で少しだけ遊んでこの日はお開き。


めいめいがまたそれぞれの日常へと戻ってゆきました。


果たして九州に在来イワナはいるのか。


教授が長年行ってきたライフワークにこれからも倶楽部として寄り添ってゆきたいと思います。

※ この調査は、パタゴニア環境助成金プログラムの1つとして行われました。


(文・写真:KUMOJI)


米良鹿釣倶楽部

米良鹿釣倶楽部は、釣りを通じてトラウトの学術研究に対する協力および漁協活動の支援を行うNPO法人です。

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