水辺の賑わいを取り戻すシンポジウム in 小丸川
振り返ればもう1ヶ月ほど前のこと、11月25日(土)に宮崎県の中央部を流れる小丸川上流の美郷町南郷で「水辺の賑わいを取り戻すシンポジウムin小丸川」が開催されました。
このシンポジウムはパタゴニアによる環境助成金プログラムのご支援により、まず小丸川流域に生息するヤマメのDNAサンプルを採取・分析し、その結果および小丸川に関する色々な問題を地元住民の方々、漁協、行政の皆さんと共有したうえで、さらに意見交換を行い今後の小丸川の環境保全活動に役立てようというもの。
(※小丸川調査の1部は『鱒の森 2024年1月号(No.73)』の「日向国の在来ヤマメ。僕らはパーマークに見惚れたい、いつまでも」という記事でもご紹介いただいております。ご興味ある方はぜひご覧ください。)
当日は、11月下旬にふさわしくピリッとする肌寒さ。
私たち倶楽部のメンバーも九州各地から集まってきて、皆で紅葉を眺めながら和気あいあいと準備をしました。
シンポジウムはまず地元の上小丸川漁協の松本理事長から、主催者として開会のごあいさつをいただきました。
続いて美郷町長の田中秀俊さまからは、小丸川流域にある4つの町で連携しながら環境保全に関する取組みを進めていきたい、との抱負を。
また、上小丸川漁協の副理事長を長友くんという若い人材が担ってくれていることを頼もしく思い、またその今後に期待しています、との激励の言葉もいただきました。
そしてまずはお馴染み、宮崎大学名誉教授の岩槻幸雄氏の事例発表です。
今年、メンバー全体で取り組んだ小丸川のサンプル採取、その支流の数は実に40本を超えていました。その内、以前はヤマメが生息していたけど、色々な事情で絶滅した支流を除く30数本について、1本1本綿密な調査を行いました。
そしてその後岩槻教授が行った分析の結果、小丸川に生息するヤマメたちの遺伝的分布の概要が明らかになったのです。
次に、国立研究開発法人 水産研究教育機構水産技術研究所に所属し、今やテレビ、雑誌等メディアで引っ張りだこの坪井潤一博士の事例発表。
坪井博士の発表は大きく分けて、
・放流すると魚が減る
・種沢は本当だった
・小丸川に今いるアユを大切に
という3つのテーマを科学的な証拠に基づき、非常に分かりやすく説明いただきました。
特に、最近新聞・雑誌やYoutube等ネットでも取り上げられている、
「放流すると川の魚が減る」
というある種衝撃的なお話しを研究したご本人から生で聴くことが出来たことは、参加者だけでなく、私たちにとっても貴重な体験でした。
同時に、小丸川について、美郷町だけではなく流域に関わる地域全体が連携することの重要性。ヤマメについて種沢を守ることや、鮎についても在来魚を増やしていくことの意味についても熱心にご説明いただきました。
そして最後は、若干20代にして上小丸川漁協の副理事長を務める長友智樹さんの事例発表。
幼少の頃から触れ合い、親しんできた小丸川に対する長友さんの若々しい情熱がほとばしる発表。
そして、発表だけにとどまらず、当日ご参加いただいた地域の方々に対して、
① ヤマメの移植放流(同じ谷もしくは近い谷)
② 鮎の増殖活動
③ カワウ対策への協力
など、具体的なアクションについても笑顔で呼び掛けていました。
そして、シンポジウムはパネラーの方々と当日参加いただいた皆さんとのパネルディスカッションへと。
老若男女、総勢50名近い方々は皆さんは誰1人として途中退席することなく、3人の発表を熱心に聞き入っておられました。
そしてその熱はそのまま質疑応答でのやり取りへと移っていき、質問の内容はパネラーの事例発表の内容にとどまらず、治水に関することや、農業・林業等、自然環境全体に渡りました。
途中、坪井博士からは、今後地域の方々、漁協、行政に加えて、林業や農業など小丸川の自然に関わる全ての方々を交えたシンポジウム等を開催できれば、状況を打開してゆくための方策が見つかるかもしれない、とのご提案もいただきました。
この日を迎える前に、長友さんが、
「(このシンポジウムは)僕のデビュー戦だと思っています。」
と言っていたのが印象に残っています。
岩槻教授のDNA解析結果や坪井博士の豊富なご経験に基づいたアドバイスが今後、長友さんと地域の方々の力となり、小丸川の環境を良くすることに役立てられるよう私どもも尽力してまいります。
最後に、今年も色んな方々のご支援により無事今年のイベント全てを終えられたことに心より感謝申し上げます。またどうぞ来年もよろしくお願い申し上げます。
※このシンポジウムは、パタゴニア環境助成金プログラムの一環として行われました。
(文 Brassburner , KUMOJI 写真 KUMOJI)
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