鱒の森 №64
「いい釣り場といい魚がいなければ、いい釣り道具をつくっても意味がない。」
この言葉を私たち一般の釣り人にあてはめるならばきっと、
「いい釣り場といい魚がいなければ、いい釣り道具を持っていても意味がない。」
となるのでしょう。
おそらく、全国多くの地域が昨日で禁漁を迎えたことと思います。
センチメンタルな気分でシーズンを振り返りながらも、自分たちはもちろん、未来の釣り人たちやフィールドのために行動しなければいけない。
この記事を読ませていただき、あらためてそんな気持ちになりました。
手前味噌なお話しで恐縮ですが、現在発売中の「鱒の森」№64にAnglo & Companyさんのミノーユーザーとして寄稿させていただきました。
今年になってフライフィッシングにチャレンジし始めたとはいえ、私は元々生粋(きっすい)のルアーアングラー。そしてこの「鱒の森」については創刊間もない時期からの愛読者です。
大好きな雑誌に大好きなメーカーさんの記事を書かせてもらえるなんて、それはそれはとても幸せで光栄なこと。
(実を言うと、この記事のお話しをいただく前までは心がかなりフライに傾いていたのですが、今回のことをきっかけにまたルアー熱も復活しました。)
昭和50年代からルアーに触れてきた私から見て、今の日本、優秀なトラウトタックルやルアーは本当に山ほどあります。ただ「釣る」だけなら、皆さんのご近所の量販店で揃うものでとりあえずは十分です。
ただ、長くやっているとそこに「コダワリ」が産まれてくる。「コレで釣れる。」では満足出来なくなり、「コレで釣りたい。」に変わってゆく。
美しい魚には己の美学を持って接したくなる。
私にとってのそれはAnglo のプロダクトを使うことです。
そして、メモリアルフィッシュの横にそのタックルを並べて良い写真が撮れたら、もう言うことはありません。
そんな、とある日の出来事を記事にさせていただきました。
記事の内容は、ぜひ書店や電子書籍でご覧になってください。私のようなアマチュアだけではなく、トラウトルアーフィッシングに関わるプロの方々の記事も多くあり、大変勉強になると思います。
そして、釣りのハウトゥだけではなく、こんな記事も。
皆さんもフィールドで「もしここの砂防ダムがなければなあ。」と思ったことは一度や二度ではないでしょう。短い区間にいくつも連なる砂防ダムは間違いなくそこの河川環境を痛めつけています。
その砂防ダムに長年のご努力の末、スリットを作ることに成功した漁協のお話しです。
コンクリートの壁に少し溝を入れるだけで河川の環境がよみがえるなら、いつか私もチャレンジしてみたい。そんな気にさせられます。
このことに関しては、佐藤成史さんがパタゴニアの公式ブログ、「クリーネストライン」で圧巻のレポートを書いていらっしゃいます。また、スリットを入れた後の河川が少しずつ川床が掘れている様子が空中写真からもよく分かります。ぜひご覧ください。
そして、冒頭の、
「いい釣り場といい魚がいなければ、いい釣り道具をつくっても意味がない。」
とは、神奈川県水産技術センターと有名なミノービルダー、小平豊さんたちが行っている神奈川県の相模川と酒匂川水系、丹沢に生息する在来ヤマメの調査・保全活動に関する記事の中で語られていた言葉です。
綿密なフィールドワーク、ミトコンドリアDNA、パーマークの大小と数、朱点のあるヤマメ・・・。普段私たちが岩槻先生に教えてもらっているフレーズがたくさん出てきて、思わず食い入るように読んでしまいました。
また、いわゆる放流魚はその土地に根付かず(産卵行動を行うことが出来ず)に、その代限りで消えてしまうことが多く、実は在来魚を増やすための活動を行う方が効率的だし、元々ある自然環境を保全するという意味でも有意義だということも先生と同じご意見でした。
加えて、純粋な在来魚のみを増殖することは困難であるため、「半在来」「半天然」のヤマメを放流し、在来の遺伝子を残してゆこうという取組みについても書かれてあり、理想と現実のギャップを埋めるためのご苦労が感じられました。
その土地に元々根ざしているトラウトたちの存在を知り、大事にしてゆくこと。
私たちが最近始めたそんな活動を長年取り組んでいる方々がいらっしゃるということにとても勇気づけられる思いがします。
どんなにお気に入りのギアを揃えたところで、カッコいいファッションで身を固めたところで、訪れたフィールドが、魚が荒れ果てていたら決して満足な休日を送ることなんか出来ません。
今日から10月。しばらくお気に入りたちはドック入り。これから次の春までは机の上のトラウトアングラーとして、実際の釣りとは違う様々な活動を行ってゆく予定です。
世の中でSDGsのような環境スローガンが大きく取りざたされる現在、きっと私たちは美しい彼らとその子孫たちのために何か恩返しをしてゆかねばならないタイミングにいるのだと思います。
(文・写真 KUMOJI)
3コメント
2021.11.09 23:57
2021.11.09 05:05
2021.11.08 23:49