Fishing Café vol.70

今までいくつかのサイトで文章を書いたり、たまに釣り雑誌でも記事を書かせてもらったりしている私ですが、実はひそかに憧れていて、いつか一回だけでもいいから書いてみたいと思っている雑誌があります。


それは、飛行機の機内誌。


年に数回、出張や旅行で空港を訪れ、搭乗ゲートをくぐり、シートに腰掛け、出発のアナウンスとともに流れるストリングス主体の優雅なBGMに耳を傾けながら、目の前の機内誌を手に取る。


ページをめくればそこには日本列島津々浦々の風景、食べ物、また色んな国の文化のことが美しい写真とともに現れて、つかの間、まるで今からそこに行くかのような気持ちになれます。


「旅に出る」という非日常をこっそりと、優しく盛り上げてくれる。そんな機内誌が大好きです。


ANAだったら「翼の王国」、JALだったら「SKYWARD」。空にいる間、旅情を盛り上げてくれる存在。


そして、釣り雑誌にも機内誌と同じ香りがするものがあります。それが、あのシマノが発行している「フィッシングカフェ」です。


以前からよく読んでいるのですが、ここには他の釣り雑誌のように、最新タックルや、釣り方の記事、大物自慢なんかはあまり載っていません。


代わりによく掲載されているのは、釣りの周辺を彩る文化的な側面。


旅、お酒、食事、道具や風土の歴史、そして著名人のライフスタイル、など。

決してガツガツしないゆったりと成熟した大人の世界。まるであの機内誌を読んでいる時と同じようなスピードで時間が流れます。

「釣りというものは単なる漁とは違う側面をたくさん持ってるんです。」

そんなことを優しく、深く伝えてくれるフィッシングカフェはさながら、釣り文化の伝道師のような存在です。


そして今回、大変ありがたいことにフィッシングカフェ最新号に私たちが応援している上小丸川のこと、来年3月に計画しているイベントのことについて掲載していただきました。



振り返って、編集部の遠藤さんから連絡をもらったのは今年9月の中旬、禁漁間際のことでした。


なんでも、宮崎県中央部の山あいに新しく出来た尾鈴山蒸留所というウイスキー工場を取材され、その足で上小丸川のヤマメ釣りにいらっしゃるとのこと。


ご一行の宮崎訪問はメールをいただいてから1週間後。遠藤さんはダメもとでの連絡だったとおっしゃっていましたが、私からすれば昔から知っている雑誌からの突然のビッグプレゼントでした。


早速その日の内に嬉しさ半分、あせる気持ち半分であわただしくメンバーに連絡を取りました。


まずは上小丸川漁協の理事でもあるKIDへ。


「ねえ、あのフィッシングカフェの取材が入るって!上小丸だよ!どこかロケーションのいい場所案内しないといけないね。」


「え!そうなんですか!?すごくありがたいです!〇〇谷とかいいと思いますけど、どんな方がいらっしゃるんですか?」


「編集部の遠藤さんという方と、ウイスキー評論家の土屋守さんとカメラマンの知来要さんの3人みたい。」


するとKIDが突然、


「えぇーーーっ!?」とこっちの耳が痛くなるような大声。


「・・・何?」


「僕、知来さんの写真集持ってます!大好きなカメラマンさんです。ヤバい!すごく嬉しいです!」


と。



次にBORAヤンに。


「ねえ、あのフィッシングカフェの取材が入るって!上小丸だよ。あなたの料理を腕をふるっておもてなししてくれないかな。」


「え!そうなんですか!?面白いですね!それで、どんな方がいらっしゃるんですか?」


「編集部の遠藤さんという方と、ウイスキー評論家の土屋 守さんとカメラマンの知来 要さんの3人みたい。」


するとBORAヤンも突然、


「ヒェーーーッ!!??」とまるで夜道でお化けに出会ったかのような絶叫。


「うるさいなぁ!! 何!?」


「だって、あの、つ、ツ、土屋さんですよ!!  とんでもない方ですよ。世界的に有名なウイスキー評論家ですよ!それに僕、尾鈴蒸留所のニューメイク(樽で熟成させる前段階のウイスキー)も記念に持ってるんですよ。すごいスゴイ!!嬉しいなあ!」


と。


実は今回、私は残念ながら1泊2日のご滞在の内、1日目しか休みを取れず、釣り取材の本番である2日目はKIDとBORAヤンにガイドを任せることになっていました。


しかしまあ、きっとこういうことをご縁と呼ぶのでしょう。


BORAヤンとKID、それぞれの憧れの人が私たちの地元に来て、宮崎の自然に親しんでくれる。


そしてそれだけではなく、ご一行が泊まった上小丸のバンガローにBORAヤンとKIDもお邪魔して、色んな話しを聞かせてもらうというこれまた滅多にないプレゼント。


彼ら経由で聞きかじったその夜の話題。


イギリスの高級ホテル、ザ・リッツ・カールトンでのドレスコード、アイスランドでのフライフィッシング、オーダーメイド紳士服の名店が連なるサヴィル・ロウのお話し・・・。


最近遅ればせながら英国ファッションにかぶれ始めた私からすると、うらやましくて仕方がないメニュー。こんなことをリアルに体験した文化人の方々から直接お話しが聞けるなんて、宮崎のような田舎ではめったにないことです。

何より、お三方と過ごした一夜は若い彼らにとって間違いなく人生の財産になり得るものでしょう。

取材が終わって、何度かメールや電話で連絡させていただきましたが、皆さんもKIDとBORAヤンがガイドした谷のことを気に入っていただいたようで何よりです。

また、今回のフィッシングカフェの他に、カメラマンの知来 要さんも全日空(‼︎)のサイトで上小丸川での取材について以下のような記事を投稿していらっしゃいます。

ため息が出るような美しい写真、ぜひご覧ください。

そして、私たちが来年3月に開催する予定のイベントについてもページを割いてご紹介いただきました。


渓流オフシーズンですが、実は今、倶楽部を挙げてこのイベントの準備の真っただ中でございます。

このことについては、今後何回かこのサイトでもご案内いたします。



最後に、私たちにまるで機内誌を読んでいるかのような時間をくれたお三方にあらためて感謝を申し上げます。ありがとうございました。

そして、またどうぞ宮崎のヤマメ・アマゴに会いにいらっしゃってください。。


(文:KUMOJI 写真:KUMOJI・BORAヤン)

米良鹿釣倶楽部

米良鹿釣倶楽部は、釣りを通じてトラウトの学術研究に対する協力および漁協活動の支援を行うNPO法人です。

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